実写セラムのプリンセス・セレニティの非常な強さに燃えました(笑)。
使命第一だったころのはるかさんだったら、結構、あの強さには興味を持ったんじゃないかと思いつつ、
でも結局、うさぎのあの性格に絆されちゃったので、反発も凄いのではないかと。そんな大妄想の末、
出来上がった創作です。
プリンセス設定だけ実写から。後はアニメだったり漫画だったりな、はるかさんとうさぎちゃんで(笑)。
ダイジェストチックな出来上がり。
読む読まないは、自由です。
ただひとつお願い。
読み終えた後の苦情は、ご容赦願います。
創作です。趣味です。萌えの吐き出し口です!!
大人対応を宜しくお願いします!同志は大歓迎です(笑)。
Are you ready?
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傲慢なその態度に、嫌気が差した。 こんな自分勝手なプリンセスのために転生をしたのかと思うと、吐き気を覚えた。 本気で、魂から、嘆いたのだ。 美しかった月の王国。シルバーミレニアム。 その次の女王となるプリンセス・セレニティ。幼くも可愛らしく、無邪気なプリンセスに初めて会ったときから、この命懸けてあの王国を、あのプリンセスがクイーンになるときも、そのあとも守ろうと誓っていた。決めていた。 それなのに、その誓いを守ることもできなかった。 幼い恋が招いた結末に、ただ、呆然となった。 美しかった王国が廃墟と化した様を見て、言葉もなく、ただひとり立ち尽くした。 あんな後悔を二度としたくないと、転生し、戦士として目覚めた時から、強く思っていた。 プリンセスであるうさぎと再会したとき、泣きたいと思った。 抱き締めたかった。謝りたかった。幸せにしたいと、願っていたのだ。 それなのに。 「キミは随分と傲慢だ」 願いが叶わないなら、すべてを無に還す、だって? エンディミオンのいない世界に、エンディミオンと一緒にいられない世界に意味はない、だって? 冗談じゃない。 吐き捨てるように呟いた僕の言葉に、しかし、プリンセスの表情はぴくりとも動かなかった。 能面のような表情に、むかむかする。 「うさぎを返してもらうよ」 「……わたしはエンディミオンといたいのよ」 「ああ、そう? でもうさぎはボクと出会って、ボクを知って、地場衛ではなく僕を選んだ。だから、過去の幻影、過去の魂であるプリンセスの出る幕はもうない。ご退場願おうか」 冷たく見据える。それでもプリンセスの表情に変化はなかった。 「わたしがその言葉に従わねばならない立場だと? 身の程を弁えなさい、ウラヌス」 僕の声音に負けず劣らず、プリンセスの声は冷たかった。 感情の揺らぎさえ、感じられなかった。 うさぎの意識は閉じ込められたままなのだと、苛立ちが募る。 砂糖菓子のように甘く、可愛らしい声で名前を呼んで欲しかった。 まるで太陽のような笑顔で笑いかけて欲しかった。 彼女の優しさを、感じたかった。 「おだんご」 今はもう僕だけが呼ぶようになった愛称で呼ぶと、プリンセスの眉根が不快そうに寄せられた。 お気に召さないらしい。 けれど、そんなことは知らない。僕の目の前に立っているのは、プリンセスじゃない。月野うさぎだ。 プリンセス・セレニティの生まれ変わりだとしても、もう彼女は、月に生まれた王女なんかじゃない。地球に、この惑星に生まれたひとりの女の子だ。 僕の大切なたったひとりの、月野うさぎ。 慌て者で、ドジで、不器用で、けれどみんなを幸せにする笑顔を持っている、誰かのために命を懸けてしまうような……馬鹿が付くほどのお人好しの、女の子。 プリンセス、と、僕たちは彼女に向かって呼ぶことはあるけれど、それはあくまで、ひとりで危険に向かって駆け出そうとする彼女を諌めるため。 この世界、この時間に集ったセーラー戦士の誰一人として、彼女を「プリンセス」として見ている者はいない。みんなが守ると決めているのは、「月野うさぎ」という名前の少女だけだ。 だから、傲慢な、彼女の心の奥底で眠りに付いたはずの「プリンセス・セレニティ」の再びの覚醒と登場は、誰も歓迎などしていない。 ましてうさぎが幾度も守った、僕らが生まれて生きているこの星の未来を、再び無に還すなど。うさぎが望んでもいないことを、許せるはずもない。 「この命を懸けてでも、止めてみせようか」 挑発的にプリンセスを睨みつけながら言うと、ふと幽かな変化が起こった。 プリンセスの表情が、予期せぬ出来事に驚いたように歪む。 少し、人間らしい表情だと、暢気な感想を抱きつつ、プリンセスの変化を黙って見つめていた。 だんだんと無表情な顔つきが、良く知っている少女のそれに変化していく。 「おだんご」 確信を持って呼びかけると、大きな瞳が涙に潤む。 それから、 「はるかさんのばかっ!」 予想通りの怒鳴り声。 「わたしを止めるために命を懸けるなんて、駄目だよっ!」 涙目で怒る少女に、僕はおどけるように言った。 「あれはおだんごじゃなかった」 「わたしの魂の一部だもん。わたしと同じだよ」 「違う。おだんごはどんなことがあっても、星を滅ぼすようなことはしない。そんなことをするくらいなら、銀水晶の力を使ってでも、自分を止めるだろう?」 「でも、過去のわたしはっ!」 苦しそうに吐き出された声を、僕は遮る。 「過去は過去。過去を悔やんだから、僕らはみんな転生をした。転生をして、今度こそ間違わずに幸せになろうとした」 「……そう、だけど……でも……」 でも、と、言い募ろうとした少女を、抱き寄せた。 卑怯な方法で、言葉を封じる。 「うさぎは僕と一緒では幸せになれない?」 「そんなことないよっ!」 腕の中からすぐに返される否定の言葉に、嬉しくなる。 「うさぎ」 強く抱き締めた少女を呼ぶ。 これ以上はないくらい甘い声で、その子の名前を。 「お帰り」 そう告げて、僕ははじめて自分が怖かったのだと思い知る。 うさぎを失うことが。 プリンセスがうさぎの体を、意識を、すべてを支配してしまうことが。 やっと抱き締められるようになった少女が、また手の届かないところへ、――エンディミオンの魂を持つ青年の元へ戻ってしまうかもしれないことに、とても恐怖を感じていたのだと思い知る。 「……ただいま、はるかさん」 ごめんね、と腕の中、か細い声がそう言った。 「おだんごが謝ることじゃない」 プリンセス・セレニティの意識の浮上、再びの魂の覚醒のきっかけが、僕を選んだ結果起こったことだとしても。 それほどまでのプリンセス・セレニティの強い思いに、正直、敬服する。けれど譲れない。 僕だってうさぎを諦められない。離せない。堕ちるならばふたり一緒がいい。 けれど、もし、罪と罰をうけるならば僕だけでいい。 守りたいのはうさぎの笑顔。その純粋な心。 「おだんご」 「なに、はるかさん?」 「約束を」 「約束?」 不思議そうな声。うさぎの吐息が僕の胸をくすぐる。 「約束をしようか。僕と」 「はるかさんと?」 どんな約束? と、まるで小さな子供のような表情で見上げてくるうさぎの額に、口づけをひとつ落としてから、僕は言った。 「僕のために、この命尽きるまで、プリンセス・セレニティの意識を閉じ込めて」 二度と会いたくないな、彼女には。そういうと、うさぎがくすりと笑った。 「はるかさんってば。……うん、でも、いいよ、約束する。わたしも彼女の力は怖いから、頑張るね。はるかさんはわたしにどんな約束をくれるの?」 きらきらと、うさぎの瞳が期待に満ちた輝きを放っている。それを見つめ返しながら、僕は言った。 「僕が叶えられるすべての願いを、叶えてあげようか」 これは嘘つきの常套句じゃないかと思いながらの言葉に、うさぎが唇を尖らせて、 「そんないい加減な約束、いらない」 拗ねて横を向いた可愛い恋人の頬を、僕は笑いながら指で突いた。 終 |