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 ゆっくりと広がった微笑。
 大輪の花が綻ぶように。
 変化していく表情を、アルフォンスはじっと見ていた。
 翳を残していた瞳が、生気を取り戻して、きれいに、きれいに輝きを増す。
 琥珀色の、瞳。
 強い印象を残す、その鮮やかさ。
 性急に伸ばされたふたりの手が、見えない壁に阻まれた。
 透明なガラスの壁に阻まれた、ふたり分の掌。
 壁越しに合わさった、ふたり分の掌。
 面に浮かんだ、愛しさを隠しもしない表情。
 お互いが、全身で。愛しさを叫んでいる様だと思った。
 透明じゃない表情。
 初めて、エドワード・エルリックという人間を知った気がした。
 アルフォンスは、自分の掌に視線を落とす。
 見えない壁に、さっきまで、触れていた掌。
 壁越しに触れ合っていたはずの……。
「せめて、名前か姿かたちのどちらかが違えば、良かったのに」
 自嘲混じりの呟きと溜息は、溢れた光に飲み込まれて溶けた。