14 ゆっくりと広がった微笑。 大輪の花が綻ぶように。 変化していく表情を、アルフォンスはじっと見ていた。 翳を残していた瞳が、生気を取り戻して、きれいに、きれいに輝きを増す。 琥珀色の、瞳。 強い印象を残す、その鮮やかさ。 性急に伸ばされたふたりの手が、見えない壁に阻まれた。 透明なガラスの壁に阻まれた、ふたり分の掌。 壁越しに合わさった、ふたり分の掌。 面に浮かんだ、愛しさを隠しもしない表情。 お互いが、全身で。愛しさを叫んでいる様だと思った。 透明じゃない表情。 初めて、エドワード・エルリックという人間を知った気がした。 アルフォンスは、自分の掌に視線を落とす。 見えない壁に、さっきまで、触れていた掌。 壁越しに触れ合っていたはずの……。 「せめて、名前か姿かたちのどちらかが違えば、良かったのに」 自嘲混じりの呟きと溜息は、溢れた光に飲み込まれて溶けた。 |